「実は夫の転勤についていくことになりました・・・ごめんなさい・・・」
「私の手の届かないところに行っちゃうからってこれで終わりのつもり?そんなこと許さないわ」
「もうこんな恥ずかしいことは終わりにしたいんです・・・わかってください」
「あなたがどう言おうと、私はいつまでも覚えてるから・・・裏切ったらどうなるかわかるわよね」
「そんな・・・」
「私はずっと忘れないし、ずっと待ってるから・・・」
「ごめんなさい・・・そっとしておいてください・・・お願いします・・・」
引越し前にかわした真紀とのそんなやり取りを思い出しながら、気持ちは遥か彼方へともう飛んでいた。
葉書を見た翌朝早くにはもう真紀の新居の近くに立っていた。
ダンナも朝から取引先と現場に向かったのでちょうどよかったのだ・・・
「私・・・これじゃストーカーみたい・・・」
そうつぶやきながら車の中で様子を伺っていると、しばらくして夫婦で玄関の外に出てきた。
相変わらず旦那さまをお見送りしているようだ。
清楚で小柄な真紀を見た途端、胸の鼓動が激しくなり頭がくらくらしてくる・・・
一年以上の歳月は彼女をよりいっそう大人にしていた。
「やっぱりいた・・・ここにいるんだ・・・やっと会えた・・・」
真紀に会えたうれしさがだんだん征服欲に変わってくる。
今すぐにその扉の向こう側に行って抱きしめたい・・・私の腕の中で喘いでいた彼女との思い出が鮮烈によみがえる。
だが、焦ってはだめだ・・・まだあの子が家にいる・・・
慎重に行動すればするほどその成果は大きく実るのだ。
幸せそうに微笑んでいる真紀を見ながら、これから彼女の身に降りかかる悲劇を想像し、じっくりと時が過ぎるのを待った。
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